インボイス制度における仕入税額控除

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建設業者の方は外注先に支払いをしたり、仕入先に材料費を支払ったり、得意先の接待で飲食店にお金を支払ったり、様々な場面で消費税を負担していています。ごく簡単に申しますと、得意先から預かった消費税からこういった負担した消費税を差し引いて、事業者は消費税を国に納めるわけです。今回の記事ではこの差し引く消費税にスポットを当ててみます。

仕入税額控除とは

消費税は、事業者と消費者の間の取引だけに課税されるものではありません。事業者間取引にも課税されます。最初の事業者Aが次の業者Bに商品を売って、その業者Bが業者Cに商品を売って、業者Cは消費者に売るといった風に、消費者に商品が届くまでに何重にも消費税が課税されることになります。

売る前段階までの消費税は、仕入により負担することになります。そこで、売ることにより預かる消費税から仕入により負担した消費税を控除して、国に納める消費税を計算しようとことになりました。この仕入により負担した消費税を控除することを仕入税額控除と言います。

現状の仕入税額控除の適用要件

原則的には

この記事を書いている令和3年5月1日時点を表題の現状とします。

仕入税額控除をするためには、所定の事項が記載された帳簿及び請求書等の両方を保存していることが要件です(消費税法30条7項)。

帳簿の場合の所定事項とは以下の通りです(消費税法30条8項1号)。2号、3号に仕入税額控除の特殊な場合の記載がありますが、ここでは割愛します。

  • 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
  • 課税仕入れを行った年月日
  • 課税仕入れに係る資産又は役務の内容
  • 課税仕入れに係る支払対価の額

請求書等の場合の所定事項とは以下の通りです(消費税法30条9項1号)。

  • 書類の作成者の氏名又は名称
  • 課税資産の譲渡等を行つた年月日(課税期間の範囲内で一定の期間内に行つた課税資産の譲渡等につきまとめて当該書類を作成する場合には、当該一定の期間)
  • 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容

例外 – 帳簿と請求書等の保存を要しない場合

災害その他やむを得ない事情がある場合は帳簿と請求書等の保存ができていなくても、仕入税額控除が可能です(消費税法30条7項)。

ここでやむを得ない事情とは

・災害に準ずるような状況

・その事業者の責めに帰することができない状況

になります(消費税法基本通達8-1-4)。

例外-帳簿のみの保存で足りる場合

1回の取引が3万円未満の場合は、請求書等の保存は不要です(消費税法30条7項、消費税法施行令49条1項)。コンビニ等での支払いはクレジットカードで行い、もらっているレシートは捨てているという方も多いのではないかと思います。現状は少額決済ではそういった対応でも問題ありません。

インボイス制度下では

1回の取引が3万円未満の特例は無くなる

今回の記事で一番言いたいところはここです。令和5年10月1日から始まるインボイス制度下では1回の取引が3万円未満の場合の請求書等の保存不要の特例が無くなります。コンビニ等の少額の買い物でもレシートは必ず保存しましょう。

帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合

1回の取引が3万円未満の請求書等の保存不要の特例は無くなるのですが、以下のような場合は請求書等の保存は不要です(新消費税法施行令49条1項、新消費税施行規則15の4)。

①適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送

②適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券などが使用の際に回収される取引(①に該当するものを除きます。)

③古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入

④質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の取得

⑤宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入

⑥適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入

⑦適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等

⑧適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)

⑨従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

まとめ

本日の記事は現行制度での仕入税額控除の要件、インボイス制度での仕入税額控除の要件をまとめました。

ご参考になれば幸いです。

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