以前、以下の記事で2021年4月1日以降から始まる事業年度で強制適用が課される「収益認識に関する会計基準」における”完成工事補償引当金”の取扱いの変化について解説しました。
有価証券報告書でどのように完成工事補償引当金が記述されているかを調べました。その結果を以下に記載します。
IFRSにおける開示例
IFRSを適用している企業では現時点でも以前解説したような定義で完成工事補償引当金を使用しているはずです。以前のブログ記事を以下に引用します。
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① 業者が意図した通りに購入者が使っても故障した場合に元通り動くようにする保証
② 業者が意図しない使い方を購入者がして、故障したとしても修理して動くようにする保証、製品の使い方をレクチャーする、といったサービスを提供する保証
従来は①、②両方とも企業会計原則注解18に従い、引当金を計上していました。
一方、「収益認識に関する会計基準」では以下のような取扱いになります。
①については従来通り引当金計上します。
②については取引価格を財⼜はサービス及び当該保証サービスに配分します(収益認識に関する会計基準の適用指針34項、35項)。約束したサービスを提供した時に売上を計上することになります。
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①の部分のみが引当金計上されているはずです。
決算日が2020年2月28日以降の会社の有価証券報告書について、重要な会計方針 > 完成工事補償引当金に記載のある会社の記載を紹介します。
日本酸素ホールディングス(株)(2020年3月31日、東証一部、監査法人:EY新日本)
(3) 完成工事補償引当金
機械装置及び機器製品に対する補償工事費等に備えるため、機械装置及び機器製品の前1年間の出荷額を基準として最近の補償実績値に基づき計上しております。
KDDI(株)(2020年3月31日、東証一部、監査法人:PwC京都)
(4) 完成工事補償引当金
引渡しを完了した海底ケーブル建設工事に係る瑕疵担保の費用に備えるため、保証期間の無償補償見積額に基づき計上しております。

日本基準(収益認識に関する会計基準適用前)での開示例
新日本空調(株)(2020年3月31日、東証一部、監査法人:トーマツ)
③完成工事補償引当金
完成工事に係る瑕疵担保、アフターサービス等の費用に充てるため、過去の実績等を勘案して見積った額を設定しております。
クロサワホールディングス(株)(2020年3月31日、東証一部、EY新日本)
④ 完成工事補償引当金
完成工事に係る過去の実績を基礎に、将来発生する瑕疵担保、アフターサービス等の費用にあてるため、過去の実績に基づいて計算された額を計上しております。
(株)長谷工コーポレーション(2020年3月31日、東証一部、EY新日本)
(2) 完成工事補償引当金
完成工事高として計上した工事に係る瑕疵についてその引渡し後において、自己の負担により無償で補修すべき場合の費用支出に備えるため、補修費用の見積額に基づき計上しております。
本日は以上です。