「収益認識に関する会計基準」の解説の続きです。
- 工事契約に関する会計基準は廃止されます。
- 工事完成基準と原価回収基準(相違点) (★当記事)
1,工事契約に関する会計基準
令和3年4月1日以後開始される事業年度から廃止される「工事契約に関する会計基準」では、工事の進捗部分について成果の確実性が認められない場合は「工事完成基準」を摘要する必要がありました(工事契約に関する会計基準 9項)。
ここで、「工事完成基準」とは、工事契約に関して、工事が完成し、目的物の引渡しを行った時点で、工事収益及び工事原価を認識する方法のことを言います(工事契約に関する会計基準 6項(4)) 。
「工事完成基準」を適用する場合は、工事がどれだけ進捗していて、費用が発生していたとしても、目的の引き渡しを行うまでは1円も工事収益及び工事原価を財務諸表に計上することができません。
なお、工事原価のうち回収可能性が高い部分についてのみ工事収益を計上する方法である、「原価回収基準」は認められません。これは、具体的な数値例だと以下のようなことです。
期中に100万円の工事原価が発生しましたが、工事の進捗度はわかりません。工事の完成は来期以降になりますが、当期発生した100万円の工事原価については先方に払ってもらえる可能性が高いです。
といった場合は、当期に工事収益100万円、工事原価100万円を計上する ということです。
2,収益認識に関する会計基準
「工事契約に関する会計基準」に記載のあった「工事完成基準」という文言はありません。次の回で触れるごく短い期間の工期の工事を除き、「工事完成基準」を適用する余地はないと考えれます。
一方で、進捗度を見積もることはできないが、工事原価回収が見込まれる場合は、原価回収基準により、工事収益と工事原価を計上することになります(収益認識に関する会計基準 45項)。
本日は以上です。